大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成11年(行ケ)60号 判決 1999年6月29日

石川県加賀市大聖寺上福田町ヌの56の4

原告

曽根健

訴訟代理人弁理士

武蔵武

茨城県猿島郡境町上小橋568-32

被告

青谷洋治

訴訟代理人弁護士

渡辺惇

同弁理士

福田尚夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  請求

特許庁が平成9年審判第21157号事件について平成11年1月7日にした審決を取り消す。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

被告は、指定商品を商標法施行令(平成3年政令第299号による改正前のもの)に定める商品区分第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」とし、「ばんどう太郎」の文字を横書きしてなる登録第2503189号商標(平成2年5月22日出願、平成5年2月26日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

原告は、平成9年12月15日、本件商標の指定商品中「魚介類」について、商標法50条の規定に基づく商標登録の取消審判を請求し、平成10年1月28日同請求の登録がされた。

特許庁は、同請求を平成9年審判第21157号事件として審理した結果、平成11年1月7日、本件審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、同年2月4日原告に送達された。

2  審決の理由

審決の理由は、別紙審決書の理由写し(以下「審決書」という。)のとおりであり、本件商標の通常使用権者である株式会社ことぶきは、本件審判請求の登録前3年以内である平成9年11月1日から同月30日の間に、指定商品中のまぐろ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ等を株式会社坂東太郎つくば店に納入し、その搬送のための搬送パネル車に「ばんどう太郎」の文字を表示したり、また、エビ等を包装した商品を搬送するためのプラスチックケースに「ばんどう太郎」の文字を付して、エビ等を取引していた事実を認定した上、本件商標は、商標法50条の規定によりその指定商品中の「魚介類」についての登録を取り消すことはできないと判断した(なお、審決書13頁10行等の「板東太郎」は「坂東太郎」の誤記である。)。

第3  審決の取消事由

1  審決の認否

(1)  審決の理由1(本件商標)、同2(請求人(原告)の主張)及び同3(被請求人(被告)の答弁)は認める。

(2)  同4(当審(審決)の判断)のうち、審決書13頁2行から17行「知ることができる。」までは認め、その余は争う。

2  取消事由

審決は、自社内における取引に係る商品と同視すべきものを商標法上の商品と誤って判断し(取消事由1)、かつ、搬送パネル車の側面の表示が商品に関する広告であると誤って判断したため(取消事由2)、本件商標の使用があったと誤って認定、判断したものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(商標法上の商品該当性についての判断の誤り)

審決は、本件商標は、株式会社ことぶきによって、「取り消し請求に係る指定商品中の「まぐろ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ」等に使用していたものと認められる」(審決書14頁1行ないし14頁4行)と認定するが、誤りである。

<1> 本件審判手続における被告の第1回答弁書(甲第3号証)によれば、審決認定の事実(審決書13頁2行から17行「知ることができる。」まで)に加え、

(a) 株式会社ことぶきから株式会社坂東太郎に対し、株式会社ことぶきの冷凍庫を発進基地として魚介類を連日搬送している。

(b) 株式会社坂東太郎は、株式会社ことぶきから、一手専属で魚介類を仕入れている。

(c) 株式会社ことぶきが所有する「ばんどう太郎」の標章を付した搬送車は、株式会社坂東太郎向けの専用車である。

(d) 株式会社坂東太郎と株式会社ことぶきは、被告以外の役員も大部分が両社を兼任している。

という事実が認められる。

<2> これらの事実によれば、商標権者である被告が代表取締役を務めるグループ企業間において、競業他社の参入を排した一手専属の状態、つまり株式会社坂東太郎向けの専用品として魚介類を取引しているというのであり、その魚介類と出所との結びつきは直接かつ明白であって、そこには他人のものとの識別を必要とする余地がなく、株式会社坂東太郎向けの専用品たる魚介類は、実質的に株式会社坂東太郎の自家用品と同視できるものであり、流通性はないというべきである。したがって、株式会社ことぶきが株式会社坂東太郎に納入したとする魚介類は、一般市場への流通性の要件を欠如するもので、商標法上の商品に該当しないものである。

(2)  取消事由2(広告行為についての判断の誤り)

審決は、「上記通常使用権者が取り消し請求に係る指定商品に係る商品を搬送するために、搬送車の側面に「ばんどう太郎」の表示をすることは広告の一種であると捉えることができ(る)」(審決書14頁5行ないし8行)と判断するが、誤りである。

<1> 広告的な使用であるためには、「商品に関する」使用が必要であるところ(商標法2条3項7号)、株式会社ことぶきの搬送車には、兜をかぶった若武者の顔と「ばんどう太郎」の文字が一緒に描かれているのみで、商品との関係が一切記載されていないから(甲第3号証に添付の審判乙第4号証の写真参照)、上記搬送車の側面の広告は商品に関する広告に該当しないものである。

<2> さらに、搬送車に荷積みされている魚介類は、前記(1)のとおり、商標法上の商品に該当しないものであるから、たとえその魚介類を一般公道で荷下ろしして一時的にその魚介類と「ばんどう太郎」の標章が同時に把握できる状態があったとしても、公衆に魚介類に関する広告として捉えられることもないものである。

第3  審決の取消事由に対する被告の認否及び反論

1  認否

(1)  取消事由(1)について

<1>中、(b)のうち一手専属であること、(c)のうち専用車であること、及び(d)は争い、その余は認める。本来、一手専属ではなく、専用車でもない。搬送車は、同じく関連会社である「かつ太郎」(茨城5店舗、千葉県、埼玉県、新潟県、群馬県に各1店舗)の各店舗にも商品を搬送していた。

<2>は争う。

(2)  取消事由(2)について

<1>、<2>は争う。

2  反論

(1)  取消事由1(商標法上の商品該当性についての判断の誤り)について

<1> 取引関係には、非関連企業間のものもあれば、関連企業間のものもあり、そのうち関連企業間のものを流通概念から除外する理由はない。

<2> 被告から本件商標の使用許諾を受けている株式会社ことぶきと株式会社坂東太郎とは、代表取締役を同じくするものの、それぞれ独立した法人であり、独立の仕切り採算で商品売買をし、かつ、業界においても別個の会社として認識されているものである。

(2)  取消事由2(広告行為についての判断の誤り)について

<1> 商標法2条3項7号に規定する「商品に関する広告」とは、商品そのものへの記載に限定されているものではなく、商品との関係において商標が付されていればよいのである。

<2> 本件の場合、搬送車が魚介類の運搬に使用されていることは明白であり(甲第3号証に添付の審判乙第3、第4号証)、その搬送車の側面に本件商標を表示することは、商品に関する広告にほかならない。

理由

1  本件商標の使用の有無について

(1)  事実認定

甲第3号証(添付の審判乙号証を含む。)、甲第5号証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(一部は当事者間に争いがない。)。

<1>  本件商標の商標権者である被告は、食料品の販売等を目的として平成3年1月に設立された株式会社ことぶき(本店 茨城県猿島郡総和町大字高野540番地3)、及び酒類・料理の販売等を目的として昭和61年11月に設立(平成2年6月現在の商号に変更)された株式会社坂東太郎(本店 茨城県猿島郡境町大字長井戸1703番地の1)の代表取締役である。

株式会社ことぶきの他の役員は、取締役小菅次男、同中澤洋光、監査役青谷きみえであり、株式会社坂東太郎の他の役員は、取締役青谷きみえ、同中澤洋光、監査役青谷曻であり、青谷きみえと中澤洋光が両社の役員を兼任している。

<2>  被告は、株式会社ことぶきに対し、平成9年11月1日以前から、本件商標につき通常使用権を許諾していた。

<3>  株式会社ことぶきは、株式会社坂東太郎の各店舗(茨城県内に4店舗、栃木県に2店舗、群馬県に1店舗)に対して魚介類のほか食肉、野菜、麺類等の食料品を継続的に販売しており、連日、株式会社ことぶきの冷凍庫を発進基地として搬送、納入していたものであるが、甲第3号証に添付の審判乙第5号証から明らかなように、例えば、平成9年11月1日から同月30日の1か月間だけをみても26日(回)にわたり、まぐろ、イカ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ等を株式会社坂東太郎つくば店に継続的に販売し、搬送、納入していたことが具体的に認められる。そして、その搬送、納入には、「ばんどう太郎」の文字を付したプラスチックケース内に上記まぐろ、イカ、エビ等を包装した商品を入れ、それらプラスチックケースを側面に「ばんどう太郎」の文字を表示した搬送パネル車に積載して搬送し、上記「ばんどう太郎」の文字を付したプラスチックケースに入れたまま上記まぐろ、イカ、エビ等の商品の納入を行っていたものである(甲第3号証に添付の審判乙第3、第4号証)。

(2)  判断

以上に認定の事実によれば、株式会社坂東太郎つくば店等に販売、納入の際使用されるまぐろ、イカ、エビ等の商品を入れるプラスチックケースには本件商標が付されていたものであり、これらの商品の包装に本件商標が使用されていたことは明らかであるから、本件商標の通常使用権者である株式会社ことぶきは、本件商標を、本件審判請求の登録前3年以内である平成9年11月1日から同月30日の間に、日本国内において、取消請求に係る指定商品中の「まぐろ、イカ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ」等の魚介類に使用していたものと認められる。

(3)  原告の主張に対する判断

原告は、商標権者である被告が代表取締役を務めるグループ企業間において、競業他社の参入を排した一手専属の状態で魚介類を取引しているというのであり、その魚介類と出所との結びつきは直接かつ明白であって、そこには他人のものとの識別を必要とする余地がなく、株式会社坂東太郎向けの専用品たる魚介類は、実質的に株式会社坂東太郎の自家用品と同視できるものであり、流通性はないというべきである旨主張する。

しかしながら、前記(1)に掲記の各証拠によれば、株式会社ことぶきと株式会社坂東太郎との間の魚介類の継続的な売買は、両会社がそれぞれ業として行っているものであって、それぞれ独立した会社間の取引として行われていることが認められ、同一会社内における単なる商品の移動であるとか、架空ないし名目的な取引であることを認めるに足りる証拠はない。また、前記のとおり、本件商標が少なくとも取引の対象となっている商品の包装に使用されていたことも明らかである。すなわち、本件商標の通常使用権者である株式会社ことぶきは、業として株式会社坂東太郎に魚介類を販売しており、その取引においては商品の包装に本件商標を使用していたことが認められる。

そうとすれば、上記(1)に認定の事実に、仮に株式会社坂東太郎がその商品を仕入れる先が株式会社ことぶきに限定され、株式会社ことぶきがその商品を卸す先が株式会社坂東太郎に限定されているとの事情が加わったとしても、それらの事実から、株式会社ことぶき、株式会社坂東太郎間の魚介類の取引が1つの会社内の実態のない名目的な取引と同視すべきものであり、その商品に流通性がないから、取引に当たって本件商標を使用しても、商標法2条3項2号にいう商品の包装に標章を付したものの譲渡行為に当たらないと解することはできないところであるから、原告の上記主張は採用することができない。

2  結論

以上によれば、本件商標は、商標法50条の規定によりその指定商品中の「魚介類」についての登録を取り消すことはできないとの審決の判断に誤りはなく、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

よって、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日 平成11年6月1日)

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

理由

1、本件商標

本件登録第2503189号商標(以下、「本件商標」という。)は、「ばんどう太郎」の文字を横書きしてなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、平成2年5月22日に登録出願、同5年2月26日に設定の登録がなされたものである。

2、請求人の主張

請求人は、商標法第50条の規定により、本件商標の商品区分「第32類」、指定商品「魚介類」について登録を取り消すとの審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び同第2号証を提出した。

請求の理由

(1)本件商標は、指定商品中「干しのり、焼きのり、干しわかめ、干しひじき、寒天、ふりかけ、お茶づけのり」について株式会社おぐちを専用使用権者として平成5年9月6日に専用使用権が設定されている。

(2)被請求人は、指定商品中「魚介類」について、過去3年以内の間に日本国内において登録商標を使用していない可能性が高いものと思われる。

また、前記のように株式会社おぐちに対して専用使用権が設定されているものの、対象となる「干しのり、焼きのり、干しわかめ、干しひじき、寒天、ふりかけ、お茶づけのり」はいずれも加工食料品の概念に属するものであって、食用として取引される全ての水産動物の包括概念である魚介類とは、原材料、生産部門、販売部門が全く相違する非類似商品である。そしてそれ以外に専用使用権者、又は、通常使用権者の何れの登録もなく、上記商標の使用を窺がわせるような具体的事実が発見できなかった。

(3)以上の次第であり、本件商標は、本審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、請求に係る指定商品について使用されておらず、従って商標法第50条第1項の規定に該当し、取り消されるべきものである。

弁駁理由

(1)被請求人の主張・立証する商標の使用は、商標の本質的機能である自他商品識別機能を発揮していない状態での使用であり、商標法上の商標の使用に該当しない。

すなわち、本件商標を使用している主体は「(株)ことぶき」と解される。ここで「(株)ことぶき」と「(株)坂東太郎」の関係について乙第1号証と乙第2号証の登記簿謄本を基に検討するに、両社は、代表取締役を筆頭に役員の大部分が兼任しているのであって、実質的に親会社と子会社、或いは支配会社と従属会社というような一体不可分の関係にある。しかも、(株)坂東太郎の各店舗は「(株)ことぶき」から一手専属で魚介類を仕入れその全てを調理して最終消費し、また、「(株)ことぶき」は「はんどう太郎」の商標を付した搬送パネル車を「(株)坂東太郎」向けの専用車として使用している、とのことであり、そのような密接な一体不可分の関係にある両社間での一般市場から隔絶された取引形態では、商標が自他商品識別機能を発揮する余地など全くない。

また、専用搬送パネル車の両側面に「ばんどう太郎」の商標を付して連日走行しているとのことであるが、専用搬送パネル車の側面に描かれた商標は、乙第4号証の写真から明らかなように、兜を被った若武者の顔と、「はんどう太郎」の文字が一緒に描かれているのみで、「魚介類」はおろか如何なる商品との関係も一切記載されていないのであって、広告的な使用にも該当しない。

(2)如上のように被請求人の主張する商標の使用は、一般市場へ流通させる主観的意図が存在せず且つ客観的事実もないのであり、商標の本質的機能である自他商品識別機能を果たす態様で使用されているとは到底認められない。

よって、被請求人の主張・立証する商標の使用では、本審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用事実を証明したことにならず、且つ、不使用の正当理由についても主張がないことからすれば、本件商標の指定商品中「魚介類」については商標法第50条第1項の規定により取消を免れない。

3、被請求人の答弁

被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由及び請求人の弁駁に対する答弁を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証乃至同第5号証を提出した。

答弁の理由

(1)本件被請求人(商標権者)は、昭和61年11月5日に、料理の販売を業とする「株式会社すぎのや」(平成2.6.5に「株式会社板東太郎」に改称)を設立し、代表取締役に就任(乙第1号証の登記簿謄本参照)。平成2年6月に当時「すぎのや」であった茨城県猿島郡境町大字長井戸267-2所在の一号店(その後297-1に移転)を「ばんどう太郎」に改称、同時に茨城県内の4店舗、栃木県の2店舗、群馬県の1店舗についても「ばんどう太郎」に改称し、その後営業拡張に伴い、板東太郎グループの系列として、食肉、魚介を素材とする、かつ、フライ料理(持帰り品あり)を提供する「かつ太郎」を、茨城県に5店舗、千葉、埼玉、新潟、群馬の各県に1店舗、さらに平成8年12月に魚介類の料理店「海のさむらい」を茨城県猿島郡境町長井戸267-2に開店して現在に至っている。

(2)そしてその間、被請求人個人として、平成2年5月22日に旧第32類の加工食料品を含む指定商品について「ばんどう太郎」を商標登録出願、本件商標の登録が認められ、又平成4年7月10日に第42類の日本料理を主とする飲食物の提供について図形を含む「ばんどう太郎」について商標登録出願、登録第3081501号商標として登録が認められ、上記「株式会社板東太郎」に、又魚介類を扱う茨城県猿島郡総和町高野540-3「株式会社ことぶき」(乙第2号証)に、夫々使用許諾している。

(3)上記「ばんどう太郎」の各店舗及び「海のさむらい」の店舗においては、その扱う魚料理の素材(魚介類)について前掲「株式会社ことぶき」から一手専属で仕入れており、その搬入ルートは、別紙乙第3号証の写真の通りである。

即ち、「株式会社ことぶき」は、その所有する「株式会社板東太郎」向けの専用搬送パネル車の両側面に、「ばんどう太郎」の商標を付して、連日に同社冷凍庫を発進基地として、魚介類について、荷積み、走行、上記各店舗において荷下し作業を繰返し、その際特に崩れやすいエビやイカなどには、「ばんどう太郎」の商標を付した固いプラスチック容器を使用しているものである。

(4)そして、この搬送パネル車の運転・作業に従事している者が、乙第4号証証明人である茨城県結城市在住の「鈴木 誠」である。

同号証に示されるように、同氏は平成9年2月より今日に至るまで、上記乙第3号証の態様における作業に従事しているものである。

(5)取引の仕切関係書類の一部を示すと乙第5号証のとおりである。

即ち同号証は、「株式会社ことぶき」より「株式会社板東太郎つくば店」に対する請求書(平成9年11月1日乃至平成9年11月30)のコピーである。扱い品目は「まぐろ」、「イカ」、「エビ」、「帆立て開き」、「ムキ甘えび」、「イカそうめん」、「あんこ」などである。

(6)このように被請求人は、「魚介類」について、本件審判請求前3年以内において、本件登録商標を使用しており、その使用は今日も継続しているのであるから、本件登録商標について不使用を指摘される由はない。許諾による使用も又使用と認められることは商標法第50条に規定されているところである。

請求人は、本件商標登録原簿に、「魚介類」について、専用使用権も通常使用権のいずれも登録されていないことを挙げているけれども、商標法50条はそれら登録の有無までも要求しているものではないから、許諾を受けた者の使用の事実があれば、使用であることは論を俟たないところである。

以上の考察並びに事実の裏付けにより、本件審判請求における請求人の主張はいずれも理由がなく、斥けられるべきものと確信する。

弁駁に対する答弁

(1)請求人は、被請求人側の本件商標の使用の事実を認めている(請求人は乙各号証について否認していない)。

(2)商標法第50条第1項及び第2項、同法第2条第1項及び第3項第1号の解釈を誤り、さらには取引形態に関する重大な誤認に基づくものとして退けられるべきである。

まず、登録商標の不使用を問えるのは、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも不使用の場合であって、親会社と子会社に関係なく、いずれかが使用していれば、まさに使用であり(商標法第50条第2項)、一般の流通業界においても親会社が商標権者で、子会社に使用許諾をしている例は枚挙にいとまがないところである。

(3)次に、商品について親会社、子会社間の一手専属であるから「一般市場から隔絶された取引形態」であるとするのは、取引の実情を理解しない暴論である。まして本件商標を付した搬送パネル車は、一般公道(街中)を走っているのであって専用の私道を走っているのではない。自他商品識別機能はもとより広告機能を充分果たしているのである。「ばんどう太郎」が付された包装容器の積み下ろしも、乙第3号証の写真で明白なように一般公道に面して行なわれている。請求人の主張のように隔絶された形態では決してない。もし隔絶された環境内の取引というのであれば、そもそも商標自体を描く必要すらなくなるはずである。

(4)専用搬送パネル車の側面に描かれた商標には、商品との関係が一切記載されていないから、広告的な使用にも該当しないという主張は誤りである。

商標法第2条第1項には商標を定義して「商品について使用するもの」とし、同条第3項1号にその「使用」とは、商品又は商品の包装に標章を付する行為」と定義している。

ここに「包装」が、容器類を含むことは通説であり、搬送パネル車も所謂ボックス車として、ここにいう容器類に含まれることは論を俟たない。

なお乙第3号証の写真において、公道に面して積み下ろししているものもプラスチック容器であることに留意されたい。請求人の主張のように常に商品の記載が要求されるとする解釈は誤りである。

(5)以上要するに、請求人のこの度の弁駁にはいずれも根拠がなく、被請求人側が自他商品識別機能を果たさせるため、また品質機能、広告機能を狙って、本件商標を使用していることは明白である。

4、当審の判断

被請求人の提出した乙第2号証によれば「株式会社ことぶき」の代表者と本件商標権者は同一人物であり、両者間には密接な関係があるものと認められる。

そして、「株式会社ことぶき」は、本件審判請求の登録前3年以内である平成9年11月1日~11月30日の間に、取り消し請求に係る指定商品中の「まぐろ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ」等を「株式会社 板東太郎つくば」に納入し、その搬送のための搬送パネル車に「ばんどう太郎」の文字を表示したり、また、「エビ」等を包装した商品を搬送するための「プラスチックケース」に「ばんどう太郎」の文字を付して、「エビ」等を取り引きしていたことを乙第3号証及び同第4号証によって窺い知ることができる。そうとすれば、本件商標は本質的に通常使用権を有する者と認められる「株式会社ことぶき」によって、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、取り消し請求に係る指定商品中の「まぐろ、エビ、ホタテの開き、ムキ甘エビ」等に使用していたものと認められるものである。

なお、上記通常使用権者が取り消し請求に係る指定商品に係る商品を搬送するために、搬送車の側面に「ばんどう太郎」の表示をすることは広告の一種であると捉えることができ、また、「魚介類」という商品の性質上、商品を一匹づつ包装したり又は一山毎に包装しその容器に商標を付す行為は、商標法第2条に規定する商標の使用というべきである。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中の「魚介類」についての登録を取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例